若輩者の私に対して、いつも「です。」「ます。」調でお話をしてくださる男性利用者様。
送迎車の中では、いつも学びと感情を揺さぶられています。
夏の終わりの入道雲の話では、昔の雲はもっと威厳があったように感じる。
風の向きが変わり、気温が変わり、自然への畏怖の念が研ぎ澄まされていく経験。
同じ道を移動していても、昔は、峠を境として天候が変わっていたが、今は、その境目があやふやになってしまったよう。
峠を境として、町の雰囲気や風土が感じられた。
そうした人としての機微が養われるとともに、自然や人への優しさが培われてきたのではないでしょうか。
「今日は鍵っ子です」と話しながら、首からかけられる紐付きの鍵をポケットから出して玄関扉を開けられました。
「ありがとうございました。どうぞ、お入りいただいて、ゆっくりとお休みください。失礼いたします」と、私。
玄関先で送迎車を方向転換し、玄関を見ると、ドアを開けて、片手に杖を突きながら、もう片方の手を大きく振って見送っていただきました。
岡場 しいのき